着物用の雨コートとはどんなもの?種類や選び方を解説
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着物を雨から守る「雨コート」の種類や特徴まとめ
雨コートとは?
雨コート(あまコート)とは、大切な着物を雨から守ってくれる着物用のレインコートのこと。季節を問わずに年中着用が可能で、夏用に裏地がない薄地の雨コートなどもあります。
真冬は雨コートを防寒コートの上から羽織ると厚着になってしまいがち。そのため、夏生地の雨コートを年中使用する方もいます。
雨コートの生地の多くは水に強いポリエステルです。
絹は水に弱くシミになりやすいですが、平織りの紬であれば表面がツルッとしていて水を吸いにくいため、雨コートでも使いやすい生地。中でも大島紬は水に強く雨コートに適しています。
おすすめは、生地表面に撥水加工をしているもの。撥水加工は水を弾くだけではなく汚れにも強くなるので、コートの縮みやシワ・カビも防ぐことが可能です。パールトーン加工が代表的な方法で、繊維一本一本が撥水加工されるため通気性も保たれます。
撥水加工がされていない着物やコートを着る時に雨の心配がある場合には、応急処置として着物用(正絹用)のガードスプレーをふっておくのも良いでしょう。ただし、生地によってはスプレーの成分と反応して柄がにじんでしまうこともあるので、一度目立たない部分で試してから使うようにしてください。
雨コートの価格相場は4,000円~となっており、手頃な値段で購入が可能。無地でシンプルなものからさまざまな柄や色が使われているものまで種類は豊富なため、おしゃれの一アイテムとしても楽しむことができます。
ポリエステルなど洗濯できる素材を選ぶと自分でお手入れができ簡単ですが、それ以外の生地は自宅で洗うことができたとしても非常に手間がかかるため、クリーニング店や悉皆屋(しっかいや)さんなどの専門店に出した方がよいでしょう。
一部式の雨コート
一部式の雨コートは、上半身・下半身で分かれずにワンピースのようにひとつなぎで作られていることが特徴です。
一枚で着物全体を覆ってくれる上に、外出先でも脱ぎ着が簡単。脱いだ後にコンパクトにまとめることもできるので、外出時から帰宅するまで雨が降り続いている日には一部式がおすすめです。
注意点は裾の長さ。丈が短すぎると足元が汚れてしまいますし、長すぎると裾を引きずってしまい美しくありません。購入の際は自分のサイズに合っているかしっかりチェックしましょう。
二部式の雨コート
二部式は上下が分かれているセパレートタイプの雨コートです。
雨の降る量に合わせて下だけ着脱したり上着だけをコートとして使用できたりと、使い方の自由度が高いのがメリット。帯結びのボリュームや着物の丈に合わせての調節もしやすく、裾を引きずる心配もありません。
雨が降ったり止んだりする日や雨の強さが不安定な時は、調整しやすい二部式がおすすめ。ただし、上下が分かれていることで脱ぎ着に少し手間がかかること、脱いだ後には少し荷物がかさばることは事前に把握しておきましょう。
一部式・二部式、それぞれのメリット・デメリットを踏まえた上で、購入を検討してみてください。
着物用の雨コートを選ぶ際のポイント
雨コートの色の明暗の違い
色は見た目の印象を変える重要なポイント。使うシーンや手入れのことも考えて選ぶ必要があります。
黒や茶色など暗めの色で柄も少ない雨コートは落ち着いた印象になるため、フォーマル・普段着どちらでも使いやすいでしょう。雨や泥はねなどの汚れが目立ちにくいのもメリットです。
一方で、明るい色を使い文様など柄がたくさん入っている雨コートは華やかな印象を与えることができます。フォーマルな場に参加する場合は悪目立ちしないかなどを考えて色柄を選ぶ必要があるかもしれませんが、華やかな雨コートはコーディネートの幅が広がり、より自分らしい着物の楽しみ方ができるでしょう。
雨コートにも「格」はある?
和装には「格」というものがあり、TPOに合わせた格の着物や小物を選ぶことが推奨されます。洋装であればパーティーにはスーツやドレスを着用するといったその場にふさわしい服装というものがイメージできると思いますが、和装も同様です。
例えば着物の「格」には以下の4種類があります。
・第一礼装(最礼装)…結婚式、お葬式などのもっともフォーマルな場面で着用するもの。
・略式礼装(準礼装)…入学式や結婚披露宴など、フォーマルな場面ではあるものの堅苦しさがない時に着用するもの
・外出着(訪問着)…少し格がある着物から趣味として楽しめる着物まで、カジュアルさはありますがTPOに合わせて調節がしやすいもの
・普段着…もっともカジュアルに着られる着物で、ちょっとした外出や普段の生活で着用するもの
では、雨コートにも同じような「格」があるのでしょうか?
実際のところ雨コートにも色や柄によって「格」の違いはありますが、あまり気にしなくても大丈夫。というのも、TPOを考えなくてはいけない場面ではすでに雨コートを脱いでいることがほとんどだからです。
衿の形も格に関わるポイント。雨コートには胸元が四角くカットされている「道行衿(みちゆきえり)」、着物と同じように胸元で左右を合わせる「道中着衿(どうちゅうぎえり)」の2種類があります。
道行衿がややフォーマル向きですが、模様がなく無地であれば道中着衿であってもほぼ同格になるので、衿による差もほぼないと言ってよいでしょう。
丈の長さの測り方にも注意
雨コートは着物を覆って雨をしのぐため、袖口や裾は着物より長い丈にしないと意味がありません。目安としては「袖口は着物より1cm前後長いもの」「裾は1~2cm長いもの」を選びましょう。
注意すべきなのは、一部式の雨コートは帯結びの大きさによって着丈が変わるという点。帯がない状態で丈を測って作った場合、実際に着た際は帯で雨コートが持ち上がるぶん短くなってしまいます。必ず帯まで締めてから丈の長さを確認するようにしましょう。
雨コートを着る際に便利な小物とは
クリップ・腰紐
雨コートを着る際には、着物の裾が汚れないように裏面が見えるような形で裾をたくし上げて、クリップで帯に留めるか腰紐で固定するのが一般的。着付けの時に使う着物クリップを利用すると、シワや跡がつきにくくなります。
価格は1,000円前後と、手軽に購入が可能です。
スカーフ・ハンカチ
雨コートを着ていても、着物の衿元や肩の部分を完全にカバーできているわけではありません。コートでは覆いきれていない首周りを大きめのスカーフやハンカチで覆っておけば、衿元が雨で濡れるのを防ぐことができます。
<スカーフまたはハンカチの使い方>
1.三角になるように半分に折る
2.着物の衿元全体をスカーフでカバー
3.スカーフの端は雨コートの衿の中に入れる
撥水効果があるものだと水を弾いて濡れにくいのでおすすめ。スカーフやハンカチ以外に、風呂敷や手ぬぐいで代用しても問題ありません。
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