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きもの便利手帳

知っておきたい、結婚式での黒留袖の着付け

黒留袖の写真

黒留袖は結婚式で活躍する既婚女性の第一礼装。黒留袖を正しく美しく着るには知識とマナーを身につけることが必要です。黒留袖の基礎知識と着付けのマナーを見ていきましょう。

結婚式に着る「黒留袖」とは

既婚女性の最上格の礼装

「黒留袖」は既婚女性が着用する着物の中でもっとも格式が高い「正礼装(第一礼装)」。五つ紋の入った地色が黒の着物で、生地には地模様の無い縮緬を用い、上半身に柄はなく、裾部分にのみ絵羽模様が入っています。
重ね着風の「比翼仕立て(ひよくじたて)」になっているのも特徴。留袖は「祝いを重ねる」という縁起の良い意味合いからかつては白羽二重(しろはぶたえ)を重ねて着るのが習わしでしたが、今では簡略化され、袖口・衿・振り・裾回しの各所を部分的に二重に仕立てる「付け比翼」になっています。

結婚式や披露宴では、新郎新婦の母親と既婚の親族、仲人夫人が黒留袖を着用します。招く側が最も格式の高い着物を着用することで、ゲストに礼を尽くし、感謝の気持ちを表しているのです。結婚式や披露宴では両家親族の装いの格を揃えることが理想ですので、事前に打ち合わせをしておくと安心です。

紋は必ず五つ紋

黒留袖には背に一つ、両袖の後ろと両胸にそれぞれ一つずつ、最上格となる「染め抜き日向紋」で合計5つの家紋(五つ紋)を入れるのが決まりです。レンタルの場合はシール形式の貼り紋もあり、便宜上の紋として誰でも自由に使える通紋を用いることもできます。

年代ごとにふさわしい柄

黒留袖の柄は、年齢や新郎新婦との続柄によりふさわしいものに違いが出てきます。
一般的に、裾模様の面積が小さく、模様の入っている位置が低いほど年配の方向き。落ち着いた色合いで裾の方にすっきりとした柄が入っている黒留袖を選ぶと、年齢に相応しい上品な着こなしになります。

一方、30代くらいまでの若い方なら、広範囲に模様が入ったものを選ぶと若々しく感じられます。色も鮮やかなものを選んでみましょう。彩り豊かで膝上まで華やかな柄が入っている黒留袖なら、華やかな印象を与えられます。

新郎新婦の母親であれば、有職文様や吉祥文様など格調高くおめでたい古典柄を選びましょう。主役は新郎新婦ですから、落ち着いた雰囲気で上品に。近い親族の場合には、母親や仲人夫人より格調が高くなりすぎないよう注意も必要です。

黒留袖に合わせる帯と小物

黒留袖に合わせるのは、格の高い織りの帯が基本。現代の主流は「袋帯」となっています。表地と裏地を別々に織り、その両端をかがって袋状に仕立てたものが袋帯。表地に金銀糸やさまざまな色糸を使って豪華な文様を織り出した錦織や唐織、綴織、佐賀錦などがあり、裏地は無地か地紋が入っています。黒留袖の場合、帯は二重太鼓で結びます。この二重太鼓には、良いことや慶びが重なるように、という意味が込められています。

柄は着物に合わせて格調の高いものを選びましょう。おめでたい松竹梅・鶴亀・鳳凰などの吉祥文様や、古典的な有職文様や正倉院文様などの柄がおすすめです。また、手持ちの黒留袖が若向きの柄の大きいものだったとしても、帯におとなしめなものを合わせれば、年配になっても着ることができます。

帯締めと帯揚げは白色の礼装用が基本。模様のない無地のほか、白地に金や銀をほどこした高級感のあるものを合わせましょう。帯揚げは綸子や縮緬、絞りのもの、帯締めは平組か冠組(ゆるぎぐみ)が多く使われます。帯留めは基本的にカジュアルな小物ですので、使わない方が格は高くなります。

草履・バッグ

正礼装(第一礼装)である黒留袖には、かかとが通常より高い4~5cm程度の「礼装用草履」を合わせます。素材は白に金、銀などを織り込んだ布地のものやエナメルなどが一般的。バッグも草履と同様に礼装用を合わせます。草履とセットのものを選ぶと、全体のバランスが取れるでしょう。

髪型とアクセサリー

黒留袖に合わせる髪型は、第一礼装にふさわしい正統派のまとめ髪が最適です。お辞儀をする場面も多いですから、ショートヘアの方も乱れないようセットしてください。黒留袖を着るようなフォーマルな場面では、基本的に結婚指輪以外のアクセサリーは身に着けません。髪飾りにべっ甲の簪やパールの髪留めなどを使うと華やかなアクセントになります。

結婚式にふさわしい黒留袖の着付け

着付けの流れとマナー

最初に下着の役割をする肌襦袢を身につけ、その上に長襦袢を重ねて着ます。着付けの順番はほかの着物と変わりませんが、黒留袖の場合は必ず「白色」の長襦袢を選びます。長襦袢の衿に縫い付ける半衿も白を合わせます。足袋も白で、ソックスタイプのものではなく、4枚か5枚コハゼのものを選んでください。腰紐や伊達締め、コーリンベルト、帯板、帯枕は白でなくても問題ありません。

着付ける際は、衿は詰め気味、衣紋はやや多めに抜くと綺麗に見えます。着丈は長めに決めて、比翼は細くまっすぐ見えるように出します。裾は斜めに上げず、きっちりと着付けましょう。帯結びは二重太鼓にして、若い方は高めに、年配の方は低めに結びます。両胸の紋は高さをきちんと揃え、背中の紋は衿と帯のちょうど真ん中になるようにして、帯が高すぎたり低すぎたりしないように注意しましょう。
帯と帯揚げの間には礼装用の扇子である「末広」を挿します。レンタルであればセットで揃っていますが、ご自分で揃える場合は下着の色や必要な小物を間違えないように注意しましょう。

結婚式の場合、式場で着付けてもらうケースが多いと思いますが、最低限自分で用意しなければならないものもありますので、事前に確認しておきましょう。和装ブラ、腰パッド付きの補正下着などを用意しておくと、着付けもしやすくなり、また腰紐を強く締めても苦しくありません。礼装の着付けは着崩れないようにしっかり締めることが多いもの。着ている時間も長くなりがちですから、用意しておくと快適になります。

細かいルールが多い黒留袖ですが、礼装は決まりごとを守ってこそ格調高く映えるもの。正しい着方で堂々と着こなしましょう。
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黒留袖には必携!「末広」の豆知識

末広は扇子の一種で、黒塗りの骨の両面に地紙が貼られ、表が金紙・裏が銀紙になっています。扇の形が「末広がりで縁起がよい」ことから礼装に使われるようになったもので、普通の扇子とは目的も使い方も全く違うので注意が必要です。

挿すのは帯と帯揚げの間

末広は扇子と違い、広げず帯に挿しておくもの。開く方を上にして金色の面を表に見せ、自分から見て左側の帯と帯揚げの間に垂直または内側に少し傾けて挿し、帯からは2~3cm出します。着物と帯揚げの間に入れるとマナー違反になりますので注意しましょう。

立礼では閉じたまま手に持つ

挨拶のときには末広を帯から出し、手に持ちます。右手で根元を持ち、外側の塗りの部分に人差し指を添え、ほか4本の指で胴を包み込むように持って、左手は扇の下から軽く添えます。体につけず、やや離して持って礼をしましょう。礼が終わったら帯に戻します。
座礼の時は、末広を自分の前に置き、手前に手をついて礼をします。

末広は儀礼的に身に付けるものですから、開くことはありません。暑い時に仰ぐのはNGですので、くれぐれも気をつけましょう。

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