帯について、ちゃんと知りたい!
はじめに
一般に「○○帯」の○○には、帯の形、柄、素材など、さまざまな言葉が当てはめられます。そのため、たとえば、「これは博多帯と呼ぶのか、名古屋帯と呼ぶのか?」というように、初心者には少々わかりにくいことも。ここでは、帯を種類、柄、素材に分類し、それぞれの内容と装い方や装いの格について解説します。
最もおおまかな分類は、帯の種類として、袋帯=フォーマル/名古屋帯=カジュアル。そして帯の素材としては、きものとは逆に、織り=フォーマル/染め=カジュアルです。これをベースにしながらも、柄や素材、合わせるきものによって、格や着用シーンが広がります。
帯の種類
丸帯
裏表どちらにも柄があり、どのような結び方をしても表に柄が出る豪華な帯。戦前までは第一礼装に用いられてきましたが、現在では振袖に使用されることがほとんどです。
袋帯
筒状に織られ、表にのみ柄があり、裏は無地。丸帯を簡略化・軽量化した帯で、フォーマルシーンで活用され、喜びが重なるようにとの縁起から二重太鼓に結ぶことができます。金糸や銀糸入りで織られたものは、振袖、紋付の黒留袖や色留袖と合わせて結婚式や披露宴、フォーマルなパーティなどに。訪問着、附下、色無地などと合わせて、華やかなパーティや会食などに着用します。また、金糸銀糸の入らないものは「しゃれ袋帯」と呼ばれ、小紋や紬と合わせてお洒落着としても活躍します。
名古屋帯
お太鼓の部分までが通常の幅で、それ以降は幅が半分になり、袋帯よりも短いのが特徴の名古屋帯。袋帯よりも簡単に結ぶことができるように改良された帯で、一重太鼓でしか結ぶことができません。そのため、「重ならない」という意味から、黒やグレーの名古屋帯は、お葬式や通夜、法事などの弔事で用いられることもあります。
仕立て方や生地によって、セミフォーマルからお洒落着まで、幅が広いのも名古屋帯の特徴です。仕立て前の名古屋帯には「九寸名古屋帯」と「八寸名古屋帯」があります。どちらも仕立て上がりの幅は同じですが、「九寸」は生地に帯芯を入れて両端を折り込み、「八寸」は帯芯を入れず両端をそのままかがって仕立てるという違いがあります。
「九寸」は帯芯を入れて仕立てるため、縮緬や塩瀬、綸子などの薄手の生地に染めをほどこした染め帯が数多く見られます。これらの染め帯は、普段使いのお洒落着として活躍します。織り生地の場合、金糸銀糸が多く使われた吉祥紋様などの格調高い柄であれば、附下や色無地などと合わせて略礼装としても着用が可能です。
「八寸」は端をかがって仕立てるため、生地そのものがしっかりしたつづれ織、紬、博多織などが用いられます。紬や博多織は小紋や紬のきものに合わせてカジュアルに楽しむものですが、金糸銀糸を使ったつづれ織の八寸名古屋帯のみ、フォーマルの場でも着用することができます。
半幅帯
普段着として用いられる、袋帯の約半分の幅の帯。主に夏のきものや浴衣に合わせますが、文庫結びや貝の口結び、みやこ結びなどをはじめ、さまざまな結び方の工夫ができるため、現在では通年、日常のおしゃれ着として楽しまれています。
帯の柄の種類
全通柄
帯全体に柄があるもので、結ぶと見えなくなる部分にまで柄が入る、贅沢な帯。総柄、通し柄とも呼ばれています。多様な締め方に対応できますが、近年ではあまり見られなくなりました。
六通柄
胴回りの1周目の隠れるところに、中無地と呼ばれる無地の部分がある帯。現在はこちらが一般的です。
お太鼓柄
お太鼓結びの前帯になるところと、お太鼓になるところの2か所のみに柄を入れたお太鼓結び専用の帯。柄の位置が決まっているため、締めるのに技術が必要です。
帯地について
帯地の三大産地
帯の産地は、大きく3地方に代表されます。日本一生産量の多い京都・西陣は、古くから職人が集まり、多くの工程を分業で担っています。大手メーカーから昔ながらの手機工房までさまざまな作り手が揃い、金糸銀糸を使った華やかな袋帯から名古屋帯まで幅広く制作されており、一口に「西陣織」といっても、さまざまな織りの種類があります。福岡・博多の「博多織」は、先染めの糸を使い、細い経糸に太い緯糸を強く打ち込んで経糸を浮かせることにより、柄を織り出します。群馬・桐生の「桐生織」は、絹糸と綿糸など、経糸と横糸にそれぞれ種類の異なる糸を用いる交織が特徴です。
帯地の種類
帯地にはさまざまな種類があり、なかなか覚え切れるものではありません。しかしながら、たくさんの帯を見ていくうちに何となく「○○織かな?」とわかってくると、一層楽しみが増すことでしょう。
つづれ織:経糸、緯糸とも太い撚り糸を使った平織りに近い織り方で、模様は部分ごとに織られます。櫛のようにギザギザにした職人の爪で緯糸をかいて織り上げるものは爪掻本つづれ織と呼ばれます。
錦織
鮮やかな色の複数の糸を用いて模様を表した織物の総称。金糸銀糸をはじめとする色糸で模様を表す糸錦が代表的ですが、ほかにも経錦、緯錦、佐賀錦、すべての紋様を金糸で織り上げた金襴などがあります。
唐織
綾織りの地に、金糸銀糸や鮮やかな色糸で柄を刺繍のように浮き織りで織り出したもの。
朱子織:繻子(しゅす)とも書き、平織り、綾織りとともに織り方の基本とされ、英語ではサテンと呼ばれます。表面には経糸か緯糸のどちらかのみが現れ、光沢があるのが特徴です。緞子(どんす)は、先染めの経糸と緯糸をそれぞれ5本ずつ使い地と文様を織ったもので、地糸を表面に多く出して浮いたように見せる「地上げ紋」という技術が使われています。「地上げ紋」のないものを朱珍(しゅちん)といいます。
紗織(しゃおり)・絽織(ろおり)・羅織(らおり)
それぞれ糸に隙間があり、透け感があるため夏のきもの地として人気ですが、帯地としても用いられます。
縮緬・塩瀬・紬:きもの地同様、染め帯地としても用いられます。
綸子(りんず):糸を先染めしない緞子同様の織り方で、染めがほどこされます。