8月の着物~きもの12ヶ月シリーズ~
Contents
8月にふさわしい着物や帯の種類
8月に着る着物「薄物」の特徴と種類
一年の中でも暑さがピークに達する8月。そんな夏真っ盛りの時期にぴったりの着物が「薄物(うすもの)」です。
薄物とは、裏地のない「単衣(ひとえ)」を、絽(ろ)や紗(しゃ)、麻(あさ)などの素材を用いて仕立てた着物のこと。柄が透けるため、着物のさまざまな表情を楽しむことができ、見る人に爽やかな印象を与えます。薄い素材で風通しも良いため、着心地も抜群。見た目も着心地も、涼やかに着られるでしょう。
薄物は種類によって着用シーンが異なります。
絽は、結婚式やお茶会などにも着ていけるフォーマルな生地。紗は絽よりも生地がさらに薄く透け感が増すため、美術館や観劇といったセミフォーマルな場面で着られることが多い生地です。麻は普段着用で、家庭で洗うこともできるため、気軽に着物を楽しみたい方におすすめです。
薄物にはその他に、上質な麻で織られた「上布(じょうふ)」という素材があり、着心地の良さに加えて汗を吸う素材のため、盛夏に薄物を品良くさらりと着こなしたい方にピッタリです。
8月の帯や長襦袢は?
薄物に合わせる帯は通年使える博多帯でも構いませんが、イチオシは夏用に作られた「紗献上(しゃけんじょう)博多帯」。美しい透け感で、より夏らしさを演出してくれます。
薄物を着る際には、長襦袢の色合いに気を付けましょう。派手な色や柄の入った長襦袢だと、着物の下から透けて見栄えを損ねてしまう可能性があります。長襦袢は白の無地など、シンプルなものを選びましょう。
着物と長襦袢の生地を合わせることも大切。麻などの堅い生地の着物に絹の長襦袢を合わせてしまうと、中の滑りが良すぎて着物の裾から長襦袢が見えることがあります。逆に滑らかな手触りの着物に麻の長襦袢を合わせると、着姿がごわついてしまいます。堅めの着物には堅めの長襦袢、柔らかい着物には柔らかい長襦袢を合わせるようにしましょう。
夏はどうしても汗をかきやすいものですが、汗をかくと下着が肌に密着し、動きにくくなることがあります。通気性に優れたヘチマ帯板やヘチマ帯枕、ステテコなどを着れば、快適度をアップすることができます。
8月に着る着物、「浴衣」と「薄物」の違い
“夏に着る和装”といえば、最初に思い浮かぶのが浴衣。「他の着物は着たことがないけど、浴衣ならある」という方も多いのではないでしょうか。
浴衣は最もカジュアルな着物。肌着の上に直接羽織ることができ、素足で下駄を履けるため、気軽に楽しむことができます。その一方で、カジュアルな着物なので、美術館やレストランなどのお出かけにはふさわしくありません。
薄物は下着や足袋が必要ですが、生地や帯、合わせる小物によってフォーマルからカジュアルまで対応できるのが魅力。
幅広い場面で使いたいなら薄物、お祭りなど限られた場面で楽しみたいなら浴衣、と使い分けると良いでしょう。
8月の着物・男性編
男性が盛夏に着物を清涼感たっぷりに着こなすには、色味の強いものではなく、薄い色合いのものがおすすめ。着物と羽織を同じ布で作る「アンサンブル」にすると、スーツのようなおしゃれな着こなしが完成します。羽織があると、冷房が効きすぎて肌寒くなったときや、改まったシーンに出席するときも安心です。
着物を選ぶ際にはサイズに注意。女性の着物の場合、布を折り上げて帯の下に出す「おはしょり」で丈を調整できますが、男性の着付けではおはしょりを作りません。着丈や身幅などのサイズが合う着物を選ぶようにしましょう。
8月におすすめの着物コーディネート
まるで水の中!紗のブルーコーデ
清涼感抜群なのが、水色地に扇柄や青もみじ、桔梗をあしらったコーディネート。紗の生地なら麻ほど見た目がごわつかず、絽ほどカッチリしすぎないので、この色合いを楽しむのにおすすめです。さらに、白い帯に紫の帯揚げを合わせるとおしゃれ度アップ。水をまとったような涼やかさで、周りの人にも清涼感を与えられることでしょう。
真夏に映える!レモン色の付け下げコーデ
見る人をさっぱりした気持ちにさせるレモン色に朝顔やアジサイなどの草花、テッセンなどが控えめに彩られた「付け下げ」を着れば、清々しい印象に。派手すぎないか気になる方は、水色がかった格子状の白い帯を合わせてみてください。スマートさが増し、大人女子でも安心して楽しめるコーディネートになりますよ。
夏の普段着に!麻のアースカラーコーデ
気温の高い日が続く時におすすめなのが、麻の薄物。緑に茶色の縞模様が入ったデザインを選べば、一気にレトロな雰囲気になります。そんな着物にぜひ合わせてほしいのが、沖縄の染め物・紅型(びんがた)の鮮やかな草木が染め抜かれた帯。アースカラーに花柄が引き立ち、蒸し暑い中でも気持ちを盛り上げてくれます。
お出かけに大活躍!絽の小紋コーデ
お出かけにおすすめなのは、サーモンピンクなどの可愛らしい色合いに、白いカエデを散らした小紋柄の絽。暖色を使っていても、少ない色数でシンプルなコーディネートにすれば暑苦しくなりません。パーティーや美術館巡りなどのお出かけにピッタリな華やかさです。
大人っぽく魅せたい!落ち着いた色合いのコーデ
紺に白の細いストライプが入った着物に黄色の帯を合わせて、上品なコーディネートを楽しみましょう。着物の「粋」は、季節の先取り。秋草をあしらった帯を合わせれば、さりげなく秋らしさを取り入れることができます。
ガラスを使った帯留めや、格子状に編まれたカゴバッグを組み合わせれば、さらにクールな印象に。盛夏だからこそ薄物の良さを味わい、自分らしい着こなしを楽しみましょう。