11月の着物 ~きもの12ヶ月シリーズ~
Contents
11月にふさわしい着物や帯の種類
11月に着る着物の種類
11月は袷(あわせ)の着物を着ます。袷とは、胴裏(どううら)と八掛(はっかけ)と呼ばれる裏地をつけて仕立てた二枚仕立ての着物のこと。暑い時期を除く10月頃から5月頃まで着用できます。
10月は一枚仕立ての単衣(ひとえ)を着ることも場合によっては可能でしたが、11月ともなれば、たとえ汗ばむような陽気であっても袷を着た方がよいでしょう。
季節が進んで肌寒い日が多くなってきたら、袷の着物の中でも素朴な温かみを感じる紬(つむぎ)の着物がおすすめ。紬は先に糸を染めてから織り上げる先染めの着物で、柄はシンプルなものが多いですが、糸の種類や織り方によってさまざまな表情を楽しめます。真綿から紡いだ糸を使用した紬はあたたかく、この時期にはぴったりです。
11月に着たい着物の色や柄
秋が深まる11月は、温かみを演出する深みのある赤色や茶色で秋を表現しましょう。赤やオレンジで紅葉、茶系で落ち葉、黄色や芥子色(からしいろ)で銀杏を表現するなど、自然の色を参考にコーディネートするのがおすすめです。
着物の世界では季節を少し先取りすることでおしゃれさを演出するため、くすんだブルーや落ち着いたトーンのグレーといった、近づきつつある冬の訪れを感じさせる色合いもおすすめです。
秋の柄には、椿・木の実・野菊・枯山水(かれさんすい)などがあり、これらの柄が描かれた着物を選ぶと季節感が演出できます。
ちなみに、秋の定番柄とされている紅葉と春の植物である桜が一緒に描かれている場合は、秋だけでなく通年着用することが可能です。
11月の帯や長襦袢は?
帯には6月から8月にかけて使用する透け感のある織り方や素材でできた夏用の帯と、それ以外の帯の二種類があります。11月に使用する帯は、透け感のない厚みのあるものを使用しましょう。着物に合わせて木の実や野菊、雁といった柄を選び、帯揚げや帯締めも透け感のないものを合わせてください。
着物の中に着る長襦袢は、胴の部分が単衣(ひとえ/裏地がない仕立て)で袖が無双(むそう/袷仕立て)になっている襦袢がおすすめ。秋と言っても11月は天気によっては汗ばむ日もあるため、洗える素材の長襦袢だと便利です。
半衿も、塩瀬や縮緬などの透け感がないものを選びましょう。
11月は、羽織やコートの出番
寒さが増してきたら、羽織や着物用のコートが必需品に。11月中旬頃までは薄手のコートや羽織が重宝しますし、11月も終わりに近づく頃には厚手のものが欲しくなります。
防寒着としての羽織は、裏地のついた二枚仕立てのものを着用します。羽織の丈の長さは流行により違いがあり、最近はひざ丈のものが主流となっています。
コートには、衿合わせが着物と同じV字になっている「道中着(どうちゅうぎ)」と四角い衿あきが特徴の「道行(みちゆき)」があり、道行のほうが道中着よりフォーマル感があります。
コートは室内では脱ぐのがマナーですが、羽織は洋装でいうカーディガンのようなものなので、室内で着用していても問題ありません。ただ、羽織はおしゃれ着としてカジュアルに楽しむものです。フォーマルな場には向かないことを覚えておきましょう。
11月におすすめの着物コーディネート
姪っ子・甥っ子 の結婚式、色留袖で華を添えて
品のよい淡い色の十日町友禅に佐賀錦の帯を合わせた、優美さをまとうコーディネート。会場を華やかに彩りながらも目立ちすぎない色合いです。
色留袖は紋の数によって礼装から準礼装まで幅広く着用できるのが魅力。五つ紋であれば黒留袖と同等の第一礼装、三つ紋は準礼装として着用可能で、新郎新婦の母親以外であれば、甥っ子・姪っ子などの親族の結婚式に着ることもできます。
裾周りに絵羽模様が広がる色留袖は、格式を重んじながらも色や柄の種類が豊富で、おしゃれを楽しめるため人気があります。黒留袖は既婚女性の装いですが、色留袖は既婚・未婚を問わず着用できるのでさまざまなシーンで重宝するでしょう。
帯を主役にした品格ある着こなし
華やかさと品格を併せ持つ美しい訪問着は、フォーマルなシーンにぴったり。結婚式などの場面では重厚感のある帯を合わせましょう。
こちらのコーディネートでは、着物は少し控えめな色柄の訪問着を選び、帯を豪華な袋帯にすることで格調高く装っています。着物と帯を同系色で合わせつつも、帯の金糸が華やかさを漂わせる組み合わせです。
温かみのある米沢紬をカジュアルに楽しむ
少し肌寒く感じるようになる11月のお出かけは、紬の中でも真綿で作られた米沢紬がおすすめです。カジュアルに着られる米沢紬に半幅帯を合わせれば、粋な着こなしに。普段着としてお稽古やお出かけ、旅行にもぴったりなコーディネートです。
半幅帯は袋帯に比べて動きやすく、結び方も豊富にあります。画像はリボン返しという結び方。垂らしたタレ先が揺れて可愛らしくも落ち着きがある結び方で、年齢を問わず楽しめます。
明るい色無地はお子様のお祝い事に
お子様が主役の七五三や入学式・卒業式では、色無地に格調高い袋帯を合わせた装いがおすすめ。明るい色を選べば控えめでありつつ華やかさも演出できます。
従来、色無地をフォーマルで着用するには紋が必要でしたが、現在ではこだわる方は少なくなっているようです。色無地で紋がないものは普段着としても着用できるため、あえて紋を入れないでおき、フォーマルからカジュアルまで幅広く着こなすことが多くなっています。
スタイリッシュな紬で街歩き
紬の中でも黄八丈といえば黄色地の格子をイメージしますが、この黒黄八丈は独特の落ち着いた色合いが都会の街歩きにしっくりと馴染みます。適度なハリ感もあり、旅行などにも最適。
帯はおしゃれな中国蘇州刺繍・蔣雪英の袋帯を合わせ、気軽に着物を楽しめるコーディネートに仕上げています。