松竹梅の着物~季節と着物~
「着物の松竹梅がおめでたい柄なのはわかるけど、どういう意味でいつ着ればよいかわからない…」そんなお悩みをお持ちの方のために、松竹梅の着物を着る上で知っておきたい文様の意味やふさわしい場面をコーディネ-ト方法も交えて解説します。
Contents
着物の「松竹梅」ってどんな意味?
松竹梅の意味と歴史
松竹梅は文字通り松・竹・梅の植物をセットに描いた柄で、忍耐力や生命の誕生を意味する縁起の良い文様として古くから親しまれています。
松竹梅は、それぞれ一つずつが大切な意味をもっています。通年枯れることなく葉を茂らす松は、長寿や生命の象徴。みずみずしく1年中緑色を保ち、地下茎を強く張ってまっすぐ育つ竹は、成長や子孫繁栄の意味。冬の寒い季節に、ほかの木よりも先に花を咲かせる梅は、忍耐力や女性の強さを表現しています。
中国の宋代(960~1279年)では、松竹梅は3つの植物を総称して「歳寒三友(さいかんさんゆう)」と尊ばれていました。
歳寒は寒さの厳しい冬を表し、三友は厳寒に耐え忍ぶ松竹梅の意味です。冬の厳しい寒さの中でも、松と竹は立派に青々しく、梅は美しい花を咲かせることから、文人の間では松竹梅が理想の姿と認識されました。
けがれがなく純真であることを表現する画題として、松竹梅は絵画などに用いられたのです。
平安時代に「歳寒三友」として中国から日本に広まり、江戸時代の中期ごろから松竹梅はめでたい文様として衣服や工芸品に使われていました。
逆境に負けずに節操を守ることから、現代の日本でも強さや生命力の象徴として、松竹梅が着物などの柄に広く使われています。
松竹梅は縁起がよい吉祥文様
着物の文様にはさまざまな柄があり、花などを使った自然文様やウサギなどをモチーフにした動物文様など多種多様です。その中でも松竹梅は吉祥文様に含まれます。
吉祥とは「きちじょう」または「きっしょう」と読み、よい兆しやめでたい印などの意味で、非常に縁起のよい言葉。吉祥文様は日本で縁起がよいとされる動植物や物品などをモチーフとした文様の総称です。
吉祥文様には他にも気品が高いという意味を持つ七宝や、発展の象徴である扇、夫婦円満を表現するオシドリなどがあります。
松竹梅は吉祥文様の中でも鶴や亀と同様に長寿の意味で、着物や帯には松と竹の葉、梅の花が描かれることが多く、それぞれ特徴ある形が晴れやかさを引き出す、力ある柄なのです。
松竹梅の着物を着られる季節はいつ?
ここでは松竹梅の着物を着るのにふさわしい季節や行事を紹介していきます。
松竹梅は寒さに耐えるという意味をもつことから、メインとして冬に着るのがおすすめです。
例えば、お正月や初詣、年始のあいさつなどの1年の始まりを祝う大切な行事。松竹梅のおめでたい柄を着て新春の喜びを表現したいですね。
成人式では自らのさらなる成長を願い、今後も素敵な人生であるように願いを込めて松竹梅の着物を装います。
松竹梅は冬がメインですが、縁起の良い柄として1年中様々な場面で着用することができ、特に祝儀やおめでたいシーンでは欠かせません。
例えば、お宮参りや七五三、入学式、卒業式などのお祝い事は、子供にとって人生節目となる大事な日。子供の誕生に感謝し、健やかな成長を願う意味でも松竹梅は最適です。
結婚式ではこれから夫婦として生活を共にしていく中で、逆境があっても2人で乗り越えてほしいという意味があるほか、梅は「産む」の語呂合わせから安産祈願も込められています。
他にもパーティーや梅の花見など、松竹梅の着物は冬やお祝い事以外の華やかなシーンでも着用できます。
吉祥文様は幸運を招く縁起の良い柄なので、特にお祝い事の席や喜びを表現したい場面では、松竹梅の柄を取り入れた装いで祝う気持ちを表すのが粋ですが、着物の柄だけでなく「格」が合っているかにも配慮が必要。
例えば松竹梅の文様だからといって結婚式に小紋(比較的カジュアルな着物)を着るのはNGです。結婚式には第一礼装と呼ばれる留袖や訪問着が、入学式などには第一礼装に加えて略礼装と呼ばれる色無地や外出着の中でも比較的フォーマルな付け下げが格として見合った着物になりますので、注意してくださいね。
松竹梅の着物コーディネートを知りたい
成人式や結婚式は振袖で華やかに
振袖は結婚式や成人式、卒業式や初詣にぜひ着ていきたい着物の一つです。
振袖は未婚の第一礼装で会場を華やかにしてくれるので、松竹梅のおめでたい柄で晴れやかに装いたいですね。
着物が竹と梅の笹梅文様の場合は、帯に松が描かれたものを締めるなど、着物と帯の掛け合わせで松竹梅のコーディネ-トを楽しむのもお勧めです。金糸や銀糸が入った袋帯を選んで変わり結びをすれば、より一層華やかさが引き立ちます。
振袖の地色が赤やオレンジなどの明るい色の場合は、帯を黒地にすれば大人っぽく落ち着いた感じに、紫色など少し弱めにすれば可愛さが演出できます。
松竹梅と地色の組み合わせで、自分がなりたいイメージを選んでみてください。
子供のお祝い事にはフォーマルな訪問着で
お宮参りや入学式など、子供のお祝い事の場面にはフォーマルな訪問着を着用しましょう。古典的で淡い上品な色合いの松竹梅の訪問着を選べば、祝儀にふさわしい装いになります。
帯は松竹梅の柄に金銀を多用した豪華な袋帯(表地と裏地に異なる2枚の生地を袋状に縫い合わせて仕立てた帯)、またはしゃれ袋帯(袋帯の中でも、礼装ではなくおしゃれ着に合わせる帯)を合わせることで、格調高くおめでたい雰囲気が強調できます。
帯揚げや帯締め、バッグなどの小物は白や淡い色、金銀を施したフォーマルな物を選びましょう。
冬に着る場合、着物の上に羽織や和装コートを着て防寒対策をしてください。
パーティーや新年挨拶まわりには江戸小紋が最適
江戸小紋(模様を繰り返し反物に染めた小紋と呼ばれる着物の中でも、遠目には無地に見えるぐらいの小さな柄を一色のみの型染めで染め上げたもの)は、パーティーや新年の挨拶まわりなどでもおすすめの着物です。小紋よりも格が上になり、帯を変えることでカジュアルでもフォーマルでも着こなせる汎用性のある着物。帯はしゃれ袋帯で合わせて締めれば装いの格が上がります。フォーマルの場合は必ず白足袋を履いてくださいね。
全体のコーディネ-トとしては、梅柄の着物に松をかたどった彫金の帯留め、そして竹柄の羽織を装えば、松竹梅の出来上がりです。着物や帯単体だけでなく、コーディネート全体で松竹梅を表す着こなしも素敵ですよ。