【サイズの合わない着物】着付けのコツと寸法直し
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着物のサイズ、合う・合わないはどこで分かる?
「着物のサイズが合わない」
あきらかに大きかったり小さかったりする場合は誰が見てもサイズが合わないことが分かりますが、そうではない場合、サイズが合う・合わないはどこを見れば分かるのでしょうか?
着物のサイズを表す「丈」と「幅」
着物にはサイズを表す「丈(たけ)」と「幅(はば)」と呼ばれる各部位の名前があります。まずはそれぞれがどこの長さを指すのかを知っておきましょう。
・身丈(みたけ)…身丈とは、着物の長さのこと。一般的には「身丈=身長」になります。
・着丈(きたけ)…身丈と着丈で混同しそうになりますが、着丈とは着付けたときの着物の長さのことです。
・裄(ゆき)…裄とは、腕の長さのこと。着物では背縫い(背中の中央の縫い目)から袖口までの長さを指します。
・袖丈(そでたけ)…袖丈とは、袖の上から下までの長さのことです。
・前幅・後幅(まえはば・うしろはば)…前幅は着物の前側半分、後幅は背縫い部分から端までを指します。
・衽(おくみ)…着物を着付けしやすくするために前幅の横には約15cm幅の細長い布があり、これを衽(おくみ)といいます。前幅と後幅の長さが足りなくても衽があれば、多少の調節が可能です。
着物のサイズの測り方
着物のサイズと普段着ている洋服のサイズは異なります。サイズを合わせるためにも、自分の体の測り方をご紹介します。
着物のサイズを計る際は150cmだと測りきれないため、2mある長めのメジャーを使うと便利です。
・身丈
痩せ型~普通体型の方は、身長の前後5cm以内であれば着こなせます。
バスト90cm以上、お腹周り100cm以上の方は胸やお腹で着物が上に上がってしまうので、身長プラス8~10cmは必要。
多少大きくても「おはしょり」で調整できますが、大きすぎるともたついてしまい、着崩れの原因になります。また、身長よりも5cm以上小さい場合はおはしょりができなくなるため、着付けすることが難しくなります。
・裄
下を向いたときに首の後ろに出る骨から、小指側の一番骨が出ている手首のくるぶしまでを測ります。
まず、まっすぐ立って脇の下の空間を45度にするように手を上げ、首の後ろの骨部分から肩に沿わせて通り、肩の部分から手首のくるぶし部分までを測りましょう。
痩せ型~普通体型の方は測ったサイズに加えて前後1~2cm、バスト90cm以上・お腹周り100cm以上の方はプラス2~3cm、胸が大きめの方や二の腕や背中の肉付きがいい方はプラス4~5cm長めがおすすめ。
腕を下に向けて測ると袖が長すぎて手が隠れてしまい、真横に上げすぎると短くなってしまうので、測るときは45度を意識してください。
・前幅・後幅
着物の幅を選ぶ基準。前幅×2と後幅×2の合計がヒップのサイズになります。
前幅は「腰回り÷4+1cm前後」、後幅は「腰回り÷4+6cm前後」で計算します。
着物の幅を決めるときは一番太いところを測るのですが、ウエストや太ももの方がヒップよりも大きい場合は一番大きい部分でサイズを測ります。
着付けをしたときに苦しくならないよう、お腹を測るときは細く見せたいからと凹ませたりせずに測るようにしましょう。
サイズが合わない着物はココで判断
お母さんやおばあちゃんの着物を受け継いだ際、着付けしてみてもサイズが合わないことがあります。
これは、同じ体型・身長でも腕の長さや足の長さが違うから。多少であれば着付けのやり方次第でうまく対応できることもありますが、サイズが合っている方が着崩れせずに着付けもしやすいです。
では、どこを見て判断するのか?
サイズが合っているかを見るポイントとしては、大きく3つが挙げられます。
・裄…手首あたりまで長さがある
・身幅(前幅+後幅+衽)…右脇の縫い目と上前(着物を着たときに正面にくる部分・自分から見て左側)の端が重なるくらいで、背中心がお尻の真ん中にくるところがベスト
・身丈…身長と同じサイズになるのがぴったりなサイズ(多少のサイズ違いは着付けの仕方で調整することができます。)
サイズが合っているかどうか確認するときの参考にしてください。
身長別・着物のサイズ一覧
着物を選ぶ際の目安として参考にしてください。
・身丈
150cm:4尺(152cm)
155cm:4尺1寸(155cm)
160cm:4尺2寸5分(161cm)
165cm:4尺3寸5分(165cm)
170cm:4尺5寸(170cm)
・袖丈
基準は身長の3/1
150cm:1尺3寸(49cm)
155cm:1尺3寸(49cm)
160cm:1尺3寸5分(51cm)
165cm:1尺4寸(53cm)
170cm:1尺4寸5分(55cm)
※若い方・フォーマルは華やかに見える様に長めに、ご年配の方・普段着は短めにと、年齢や用途に合わせて仕立てたりもしますが、一般的には1尺3寸がスタンダードになっています。
・袖口
150~170cm:6寸(23cm)
・裄
体型によって調整する
150cm:1尺6寸5分(62cm)
155cm:1尺7寸(64cm)
160cm:1尺7寸5分(66cm)
165cm:1尺8寸(68cm)
170cm:1尺8寸5分(70cm)
・前幅
ヒップ90~95cmの場合、体型によって調整する
150~170cm:6寸3分~6寸5分(24~24.5cm)
・後幅
ヒップ90~95cmの場合、体型によって調整する
150~170cm:7寸7分~8寸(29~30cm)
長襦袢・帯のサイズ
着物以外に、長襦袢や帯のサイズも知っておきましょう。
長襦袢は着物の下に着るもので汚れや防寒の役割もあり、長すぎても短すぎても好ましくありません。
・長襦袢の長さが長い場合…袖口から飛び出して不恰好になる
・長襦袢の長さが短い場合…袖口の裏に汚れがついたり黒ずんだりする
長襦袢を着たときに足首が見えないくらいの長さが適切とされており、「身長×0.85」が似合うサイズの目安。もしくは、女性の場合、身長-25cmの長さであれば問題ないとされています。
帯のサイズは大きく3つに分かれており、半幅帯(長さ約3.6~4m前後/幅17cm )・袋帯(長さ約4m30cm前後/幅約31.2cm)・名古屋帯(長さ約3m60cm前後/幅約30.4cm )となっています。
帯の結び方や着物、場面によって適切なサイズは変わるので、状況に応じて相応しい帯を選ぶようにしましょう。
サイズの合わない着物、どうすればいい?
購入した着物やもらった着物のサイズが合わない時の着付けのポイントをご紹介します。
着付けの仕方を工夫する
・身丈が長くて、おはしょりが出過ぎてしまうとき
1.まずは通常通りに腰紐を結ぶ。
2.おはしょりを下ろして衿を合わせる。
3.衿元から滑らせるようにして、バストの下あたりで胸紐を結ぶ。(軽くで問題ありません)
4.帯を当ててみておはしょりをどの位置にするか決める。
(だいたい人差し指1本の長さがきれいに見えると言われています)
5.右手をおはしょりに入れ、ちょうどいい高さまで持ち上げ、必要であれば落ちてこないように着付けクリップなどで留めておく。後ろも少し引き上げておく。
6.5で引き上げた部分の真ん中あたりを紐で結ぶ。
7.後ろのおはしょりを調整する(3の胸紐と6の胸紐の間から生地を出します)
8.最後に余分なおはしょりを抑えるように「伊達締め」をする。
・身幅が大きくて布が余ってしまうとき
長いからといって着物の前側で体を包み込むと歩きづらくなってしまいます。
<下半身編>
1.まず上前(自分から見て左側の表に出る部分)を普段通りに合わせる。
2.下前(自分から見て右側の表に出ない部分)を巻きこまず、左太ももあたりで折り返す。
(下前を手前で折り返すと上前がめくれやすくなり、長襦袢まで見えてしまうので注意してください)
身幅が大きいと横側が余ってしまいます。
<上半身編>
1.バストの下あたりで胸紐を結ぶ
2.背中側にシワがよっているので、余っている布を脇の下までもっていく。
3.親指で脇縫いにグッと押し込んでタックをとる。
4.胸紐の上の部分がもたついているときは、胸紐の下から生地を引っ張る。
5.「伊達締め」して帯を結ぶ。
・身丈が短くおはしょりができないとき
おはしょりが出ないときは2つの調整方法があります。
1.腰紐の位置を骨盤の位置ギリギリまで下げる
骨盤まで下げるとおはしょりが十分に出るようになります。位置を変えるだけなので簡単にできます。
2.腰紐を下げても出ない場合は、「対丈(ついたけ)」で着る
対丈とは、男性の着物や旅館の浴衣のように羽織って床すれすれの長さに仕立ててある着物のこと。
1.腰紐を締めるところまでは普段通り。
2.衿を合わせるときは、抜き加減を少なめにして胸紐で結ぶ。(前身頃(着物の前部分)に余りがあるときは胸紐と腰紐の間に出しておく)
3. 「伊達締め」して帯を結ぶ。
よそ行きの場合はNGですが、普段着として、おはしょりがなくても気にならないという場合は対丈で着てOK。ただ、対丈で着ると着崩れすることがありますので気をつけましょう。
悉皆(しっかい)に出して仕立て直す
悉皆とは、「ことごとく、すべて、残らず」という意味。着物の場合、「シミ抜き」「洗濯」「仕立て直し」「リフォーム」など、着物に関する全ての仕事を引き受ける業者のことを悉皆屋と呼びます。
悉皆でできることは、以下のように多岐にわたります。
・シミ抜き
・洗い張り
・丸洗い
・和裁
・友禅修復
・金彩加工
・刺繍
・撥水加工
・カビ落とし
・家紋入れ・入れ替え・消す
・染め替え
着物のサイズが合わないときは、悉皆に出してお直しをしてもらいます。
サイズ直しでは裄を縮めるだけではなく、状況次第では長くしてもらうことも可能。
・裄を短くしたい場合は、肩と袖の縫い代部分を短くして調整
・裄を長くしたい場合は、着物の袖付け部分をほどいて調整
また、裄を出す場合は縫い込まれていた部分に跡(スジ)が残るので、「スジ消し」をしてもらえます。
着物の裄を直すときは、長襦袢も一緒にお直しすることをおすすめします。
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