ちゃんと知りたい!加賀友禅の基礎知識
加賀友禅とは?
加賀友禅の歴史
加賀は現在の石川県南部の旧名で、江戸時代には前田家を藩主とする加賀藩として栄えました。1712年、京都で活躍した扇絵師で、京友禅を確立したといわれる宮崎友禅斎(みやぎゆうぜんさい)が金沢に居を移し、加賀藩の御用紺屋棟取の「太郎田屋」にて、さまざまな新しいデザインの模様染めを考案。これが加賀友禅の発展の礎となりました。
加賀友禅の特徴
写実的に描かれた草花柄が最大の特徴です。技巧的には、たとえば花の外側を濃く、中心を淡く染める「外ぼかし」や、1枚の葉が枯れたり紅葉したりしている様子を三色で表現する「三色ぼかし」、葉に虫食いの跡をあえて描く「虫食い」などにより、立体感とリアリティのある柄を表現しています。
加賀五彩
全体的に落ち着いた色合いが感じられることも、加賀友禅の特徴です。これは、「加賀五彩」と呼ばれる藍、燕脂(えんじ)、黄土、草、古代紫の5色が基調とされているため。現代では、この5色を基礎として、作家の個性や流行色を反映させた配色になっています。
加賀友禅と京友禅の違い
最大の違いは、京友禅では華やかさを表現するために用いられる、仕上げの金箔や絞り、刺繍などの染色以外の技法が、加賀友禅ではほとんど用いられないこと。あくまでも「染め」を主体としています。加賀五百万石の武家文化のなかで培われた、落ち着きと風格、そして繊細な日本の心を、染めによって表現しているきもののが「加賀友禅」だといえるでしょう。
友禅ができるまで
図案〜下絵
まずは図案が作成され、図案の上に白生地を重ねて下から照明を当てて、「青花」と呼ばれるツユクサの汁で図案の線をなぞって写します。青花は水ですすぐと消えます。
糊置き
下絵の線に沿って、紙の筒に入れた糊を細く絞り出してなぞります。これを「糸目糊」と呼びます。糊は餅米の粉を蒸して作ったもので、彩色の際に色のにじみを抑える役割を果たします。
彩色
糸目糊の内側に、筆や刷毛を用いて彩色します。加賀友禅の決め手となるため、高度な技術を要します。
下蒸し〜中埋め
一度反物を蒸したあと、彩色された部分を糊で覆います。「糊伏せ」とも呼ばれ、地色を染める際に色が重なることを防ぎます。
地染め
刷毛を使ってきものの地色を染める工程で、「引き染」とも呼ばれます。集中力と熟練の技により、均一にムラなく染めます。
本蒸し
反物を箱に入れ、蒸気で蒸します。蒸すことによって生地の繊維が膨張し、繊維の組織まで染料が入り、色が生地に定着します。
水洗
流水で、糸目糊や伏せ糊、余分な染料を洗い流します。現在でも、数軒の染屋によって浅野川の流れに反物を広げる「友禅流し」が行われ、金沢の冬の風物詩ともなっています。冬の冷たい水で繊維を引き締めることで色が冴えます。ほとんどの作品は、地下水を組み上げた人口川で、1年中行われています。
脱水〜乾燥、仕上げ
乾燥させた後、蒸気でシワを伸ばしたり、反物の幅を整える「ゆのし」という仕上げ作業が行われて、完成します。
加賀友禅の見分け方
加賀染振興協会が認めた加賀友禅のきものと関連製品には、加賀染振興協会が発行する証紙が付けられています。また、加賀友禅技術者の資格を持つ加賀友禅作家の作品には必ず作家の落款(らっかん)が押印されています。落款は、加賀友禅の公式ウェブサイトで検索することもできます。